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研究トピックス

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No.8 日焼け防止にブラックベリー,ラズベリー果実 〜 SPFと抗酸化活性は? 〜

ブラックベリー(バラ科Rubus fruticosus),ラズベリー(バラ科Rubus idaeus)はそれぞれ黒紫色,赤紫色の果実をならせ,抗酸化作用の大きいアントシアニンなどのフラボノイドやフェノール類を多く含み,美味しく健やかさをもたらす食べ物として多くの人に親しまれている。

 

一方,紫外線を過度に浴びることは,光老化,ガンの発症などにも関係しているとされ,紫外線を吸収または反射することによる日焼け防止は,美容の目的のみならず大きな関心を集めている。

 

今回紹介するブラックベリーやラズベリーなどが含む抗酸化物質は紫外線によるフリーラジカルの影響から細胞を保護すると考えられ,特にフラボノイドは日焼けによる皮膚のダメージを防ぎ,日焼け止めとして機能することが期待される。

 

この研究では,ブラックベリーおよびラズベリー抽出物を外用剤の原料として用意,in vitroでのサンプロテクションファクター(日焼け止め指数 SPF)および抗酸化活性を評価,さらにそれらの安定性を検討している。

 

果実として市販されているブラックベリーとラズベリーを細切,40℃で3日間乾燥した後,ミキサーで砕き60%エタノール溶液に入れて,50℃で3時間撹拌することにより抽出した。

ベリー抽出物中のアントシアニン量を測定,DPPH法により抗酸化特性を調べた。その後安定化された溶媒に入れて,ベリー抽出物含有のエマルジョンとし,それぞれのエマルジョンのSPF値を測定した。

 

その結果,100gの果実中にブラックベリーは65.58mg,ラズベリーは29.93mgのアントシアニンを含有していた。抗酸化特性については,ブラックベリーは0.11%(v/v)濃度で74.01%,ラズベリーは0.14%(v/v)濃度で82.33%フリーラジカルを除去した。そして,O/Wエマルジョンに各々の抽出物を含ませSPF値を測定したところ,ブラックベリーは54.57,ラズベリー37.32を示した。また,エマルジョンは淡いピンク色,クリーミーなテクスチャーおよび典型的なフルーティーな香りを示したが,間接光と熱により色と香りが変化した。

 

これらの結果より,ブラックベリーとラズベリー抽出物は抗酸化作用も大きく,高いSPF値を示したことから,日焼けによる皮膚障害から保護,皮膚の老化を防ぐことを目的として活用できる可能性が示唆された。また抽出物を含む製剤は,安定性を確保するために,不透明なパッケージに入れ,冷蔵保存するなど工夫する必要が示唆された。

 

今回,評価の指標として用いられたSPFは,紫外線によって起こる急性の炎症(日焼け)の防止効果の程度を表しているもので,市販されているサンスクリーンなどの化粧品にもよく明記されている。日焼けは主にUVB(中波長紫外線)によって起こることから,UVBの防止効果を表しているといえ,数字で表し,値が大きいほど,防止効果が高くなり,表示される最高値は50となっています。安定性への課題は残るものの,ブラックベリーやラズベリー果実といった天然物での効果が明らかになることは,より皮膚刺激の小さいスキンケアの実現に大きな期待を持ち得ることにつながるだろう。

また,今回はアントシアニンに注目しているが,抽出に用いた基剤の性質から,より多用な成分を含有していると考えられ,それらの有効性の検証も望まれるところだ。

〔文献〕Letícia Caramori Cefali et,al., In vitro antioxidant activity and solar protection factor of blackberry and raspberry extracts in topical formulation. J Cosmet Dermatol. 2019;18(2):539-544.​

 

​(5/25/2021 報告:村上志緒 学術委員)

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