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研究トピックス

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No.25 更年期の寝汗対策に月見草オイル

更年期はすべての女性が経験する体の転換期だが、一般的に45歳から55歳頃の閉経前後10年間、エストロゲンレベルの低下によりもたらされる更年期障害の程度は人により程度が異なり、生活の質に著しい影響を与えることもある。

 

更年期障害の症状にはホットフラッシュ、骨粗鬆症、膣乾燥感、性交疼痛症、関節痛、動悸、イライラ感などがあるが、特にホットフラッシュは夜間に発生することが多く、それによる寝汗と睡眠障害が生活の質を下げる大きな要因となることがある。

 

世界保健機関(WHO)によると、世界の人口の80%が更年期障害の治療にハーブを使用していることがわかっている。その中でもアカバナ科でγリノレン酸を含む月見草(Oenothera biennis)オイルは、乾癬などの皮膚疾患のほか、月経前症候群の症状の緩和や更年期のホットフラッシュなど幅広く利用されている。

 

更年期におけるホットフラッシュおよび寝汗に対する月見草オイルの効果を調査することを目的として、更年期障害をもつ閉経後の女性を対象に行われた最新の単盲検ランダム化比較試験で興味深い結果が報告された。この試験では、170名の対象者が2グループに分けられ、一方は1カプセル(1,000 mg)の月見草オイルを1日2回、もう一方のグループは同量のプラセボを与えられ、8週間服用し、介入の1週間前と8週間後にホットフラッシュと夜汗について以下の変化を記録した。

 

・ホットフラッシュと寝汗の頻度

・ホットフラッシュの症状の程度:軽度、中程度、重度

・ホットフラッシュの継続時間:30秒、30〜60秒、1〜3分、3〜5分、および5分以上

・寝汗の症状の程度:軽度(起きはしないが、起床時に服や寝具が汗で濡れている)、中度(夜中に目覚めるが特に対処をするほどでもない)、重度(夜中に目覚め、何か対処が必要になる程度)

 

結果はホットフラッシュの頻度、継続時間、および症状の程度には特に2グループ間に明確な差は生じなかったが、寝汗に関しては、月見草オイルのグループでは、介入前は寝汗がない人はゼロだったところ、介入後に27.5%の人が寝汗がなくなるなど顕著な軽減が認められ、また、寝汗の程度に関しても、月見草オイルグループでは、介入前に8.8%だった軽度の割合が介入後には47.5%に増え、また、介入前は25%だった重度の割合が介入後は2.5%に減るなど、寝汗に対する顕著な改善の効果が認められた。プラセボ群では介入前と介入後で寝汗の頻度と症状の程度に関して大きな変化は見られず、介入後も寝汗がないのはゼロで、頻度が高い割合は39.8%を占めており、重度の症状を持つ人の割合が介入前と変わらず18.1%のままだった。

 

月見草オイルがホットフラッシュや寝汗を改善するメカニズムは不明だが、エストロゲンアゴニストおよびアンタゴニストとして作用し、エストロゲン受容体との相互作用を介して作用する可能性があるとされている。

 

月見草オイルのホットフラッシュへの効果は多くの研究がされているが、効果が認められる試験もある中、その効果は一定はしておらず、筆者は本試験でのホットフラッシュへの結果についても、月見草オイルの投与量が影響しているかもしれないと記述している。しかしながら、特に寝汗に効果をもたらす可能性があるという結果は、更年期障害対策におけるさまざまなハーブの使い分けに役立つ情報となるであろう。

 

〔文献〕

Kazemi F, et al., The Effect of Evening Primrose Oil Capsule on Hot Flashes and Night Sweats in Postmenopausal Women: A Single-Blind Randomized Controlled Trial. J Menopausal Med. 2021 Apr;27(1):8-14. doi: 10.6118/jmm.20033. 

 

(2/15/2022 報告:河野加奈恵 学術委員)

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