研究トピックス
No.23 口唇ヘルペスにオリーブ葉エキス
非常によくみられる感染症のひとつで、口唇ヘルペスなどを引き起こす単純ヘルペスウイルス(HSV-1:ヒトヘルペスウイルス1型)がある。HSV-1における一般的な対症療法ではアシクロビルクリームが広く使用されているが、一方でその耐性と副作用の改善が課題となっている。
これらの課題を克服するため、抗ウイルス効果があるオリーブ葉(Olea europaea)エキスの口唇ヘルペスにおける効果の検証が、臨床実験にてアシクロビルクリームと比較して行われた。1)
このランダム化二重盲検臨床試験は、HSV-1とすでに診断された66人の患者をオリーブ葉エキス2%含有のクリームまたはアシクロビル5%クリームの2つのグループにランダムに分け、1日5回6日間投与し、介入前と介入後3日目と6日目の症状を記録した。
結果、両方のグループで症状が減少し、両方の薬剤がともにHSV-1の治療に有効であることを示したが、いつくかの点でアシクロビルクリームよりもオリーブ葉エキスクリームグループで有効な結果が認められた。オリーブ葉エキスクリームグループの方が、アシクロビルクリームグループと比較して、3日目の出血、痒み、および痛みの軽減、また、6日目の刺激、痒み、および色の変化の軽減、さらには治療の時間の短縮が認められた。これらの結果から、オリーブ葉エキスクリームの方が口唇ヘルペスの治療に優れている可能性があることがわかった。
オリーブ葉に含まれるセコイリドイド(オレウロペインおよび誘導体)が幅広い抗菌作用や抗酸化作用を持ち、また、オリーブ葉エキスはHIV感染において、HIVウイルスの細胞間伝達と複製を阻害することなどがわかっている。2)
伝統的にも、その優れた抗菌、抗ウイルス、および抗真菌作用が風邪やインフルエンザ始め様々な感染症に用いられてきた。副作用の少ない選択肢として今後広く活用されていくことを期待する。
〔文献〕
1) Toulabi T, et al., The efficacy of olive leaf extract on healing herpes simplex virus labialis: A randomized double-blind study. Explore (NY). 2021 Jan 29:S1550-8307(21)00004-5. doi: 10.1016/j.explore.2021.01.003.
2) Lee-Huang S, et al., Anti-HIV activity of olive leaf extract (OLE) and modulation of host cell gene expression by HIV-1 infection and OLE treatment. Biochem Biophys Res Commun. 2003 Aug 8;307(4):1029-37. doi: 10.1016/s0006-291x(03)01292-0.
(1/9/2022 報告:河野加奈恵 学術委員)