top of page

研究トピックス

rhodiola.jpg
No.27 緑茶、ロディオラ、マグネシウム、ビタミンBの
併用によるストレス軽減効果

適度な負荷(ストレス)は我々が成長していくのに不可欠であるが、個人の生活の質と社会生活に深刻な影響を及ぼす負のストレスは往往にして心理的不安感を伴い、双方のネガティブな影響を増強する。

 

労働に関連する健康障害において、ストレス、不安、およびうつは増加してきており、このストレス耐性の強化において、栄養療法やハーブ療法の利用が期待されている。その中でも、マグネシウム、Bビタミン、緑茶(Camellia sinensis)、およびロディオラ(Rhodiola rosea)はそれぞれ単独でストレスや不安を和らげる効果があるとされている。

 

ニューロンの過興奮を軽減するマグネシウムや、マグネシウムとともにセロトニンなどカテコールアミン産生にかかわるビタミンBは、ストレス反応に関わる内分泌の反応性を和らげるために利用される栄養素の第一選択肢である。また、ロディオラ、緑茶のフラボノイド(EGCG:エピガロカテキンガレートなど)やL-テアニンも、抑制性神経伝達物質のGABAの活性に影響するとされる。ロディオラと緑茶に関しては、急性ストレス下の脳活動において、不安状態の弛緩と調節を表すシータ波の増加など、神経生理学的プロセスを調節する効果の他、ストレス軽減、ストレス下における持久力および対処能力を高めるなどの主観的な効果など、そのストレス下における効果が幅広く研究されている。 

 

これら単独で効果のある成分を、急性ストレス誘発下で組み合わせて併用することにより、個々での使用を超えた機能的な相乗効果がもたらされるか試験が行われた。

 

この二重盲検プラセボ対照試験では、マグネシウム(150 mg)とBビタミン(ビタミンB6:0.7 mg、葉酸:0.1 mg、B12:0.00125 mg)を含有した錠剤、緑茶(40%L-テアニン 50 mgを含むエキス125mg)のカプセル、およびロディオラ(エキス222mg)のカプセルを用意し、100人の成人を対象に、マグネシウムとビタミンB+緑茶+ロディオラの併用グループ、マグネシウムとビタミンB+ロディオラ、マグネシウムとビタミンB+緑茶、およびプラセボの4つのグループに分け、それぞれを摂取したのちに、急性ストレスを誘発する実験プロトコル(TSST:トリーアの社会ストレステスト)を行い、その後、脳波検査(EGG)、唾液コルチゾール値、血圧、心拍変動、および主観的なストレス度を測るテスト(SACL、POMS-SF、ボンドレーダームードスケール、STAI)を行ない、それぞれのグループの主観的、神経学的、生理的なストレス軽減効果を調べた。

 

その結果、併用グループにおいて、EGGでは目を開いた状態で前頭正中線領域でFmθが認められた。シータ波の一種のFmθの前頭正中線領域での増加は、注意集中時や瞑想などの精神作業時に増加するとされ、また、抗不安薬の神経効果としても認められる反応である。このFmθは緑茶グループでも認められたが、併用グループの方が優位な結果であり、併用による相乗効果であると考えられる。その他の主観的なテストの結果からも、併用グループでは、その他グループと比べて、主観的なエネルギー覚醒が増長し、ネガティブな気分や不安感が軽減し、ストレスからの即時および7時間後までの回復においても効果が認められた。

 

この結果で興味深かったのは、これら成分の併用による相乗効果があることがわかったことだけでなく、唾液コルチゾール反応や心血管反応の差は各グループ間で認められなかったことである。これは、ストレス誘発テストが正常に働き交感神経が高められたことを示しているが、また、併用グループのストレス軽減作用がこれら生理学的なストレス反応を弱めることにより引き起こされるのではなく、それとは異なる直接的な作用経路を介して起こり得ることを示している点である。

 

これら有用な成分に頼りすぎるのは潜在的疲労の蓄積を引き起こすことになりかねないので注意が必要ではあるが、避けられないストレス下において、その心身のネガティブな影響を低減し、効果的に乗り越えるために、有用な組み合わせであると考えられる。

 

〔文献〕

Boyle NB, Billington J, Lawton C, Quadt F, Dye L. A combination of green tea, rhodiola, magnesium and B vitamins modulates brain activity and protects against the effects of induced social stress in healthy volunteers. Nutr Neurosci. 2021 Apr 26:1-15.

 

(3/15/2022 報告:河野加奈恵 学術委員)

bottom of page