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研究トピックス

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No.4 ヒノキチオールが肺炎球菌による肺炎の症状を緩和
​ 〜 抗生物質が効きにくい薬剤耐性肺炎球菌にも有効 〜

感染により肺炎が誘発されて重篤に至るケースは多く見受けられ,肺炎は世界的な脅威となっている。

 

肺炎の主な原因となる細菌は肺炎球菌であるが,抗生物質の頻用などにより薬剤耐性をもった肺炎球菌が多くみられ,治療上の大きな問題の一つとなっている。

 

今回紹介する研究は,新潟大学大学院歯学総合研究科のグループによるもので,肺炎のモデルマウスを用いたin vivo(生体)研究であり,数種のヒノキ科樹木が含有している成分であるヒノキチオールが,耐性菌を含む肺炎球菌に対して抗菌作用があるか,また,肺炎による組織傷害や炎症を緩和する効果があるかについて検討している。

 

ヒノキチオールは ,タイワンヒノキ(Chamaecyparis taiwanensis)やベイスギ(Thuja plicata),ヒバ(Thujopsis dorablata)など数種のヒノキ科の樹木が含有するトロポロン類(不飽和七員環化合物)の精油成分で,β-ツヤプリシンともいう。

 

本研究では,マウスに耐性菌を含む肺炎球菌を感染させ,その後にヒノキチオールをマウス体重比で約15μg/g投与し,投与しない肺炎マウスと比べて検討した。

 

その結果,ヒノキチオールを投与した肺炎マウスで,以下のことが確認された。

1)肺炎球菌の菌数が約80%減少した。

2)傷害作用をもつエラスターゼの細胞外分布を抑制した。

3)肺胞中の炎症性サイトカイン(IL-1β,IL-6,TNF等)の産生が抑制された。

 

これらの結果から,ヒノキチオールは,耐性菌を含む肺炎球菌に対する抗菌作用を持ち,感染から誘発されるエラスターゼによる自己組織の傷害を抑制,炎症性サイトカインを適切に抑制して,過剰な炎症を防ぐことが確認された。

 

ヒノキチオールが,肺炎球菌の感染,炎症の誘発,症状の重篤化という段階的な肺炎の進行を抑制することで,治療効果を有する可能性が示唆され,本研究の今後の展開が大きく期待される。

 

〔文献〕Isono T, Domon H, Nagai K, Maekawa T, Tamura H, Hiyoshi T, et al. (2020) Treatment of severe pneumonia by hinokitiol in a murine antimicrobial-resistant pneumococcal pneumonia model. PLoS ONE 15(10): e0240329. 

​​(3/2/2021 報告:村上志緒 学術委員)

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