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研究トピックス

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No.28 バナナのヒト糞便中の細菌叢の組成と代謝に及ぼす影響

バナナ(バショウ科バショウ属Musa acuminata)は,私たちの暮らしの中でとても親しみのあるフルーツである。そのバナナには,難消化性炭水化物が豊富に含まれ,プレバイオティクスとして私たちの腸の状態に影響を与える機能性を有していることが期待されている。

今回紹介する研究は,バナナによるヒト腸内細菌叢の組成と短鎖脂肪酸(SCFA)の生成の変化を調べ,プレバイオティクスとしての機能性を明らかにすることを目的としてin vitroでの検証を行ったものである。

中国の海南島産の熟したバナナを乾燥させて粉末にし,6名の中国人ドナーの糞便に添加,24時間培養し,これによる代謝への影響を短鎖脂肪酸の生成を指標に調べた。また,さらに細菌叢の組成の変化は,16SリボソームRNA(16SrRNA)のゲノム配列についてハイスループットシーケンシングを用いて検討した。

結果は以下の通りである。

1)バナナの含有する多糖類の分解は,6つの糞便試料のすべてで観察された。

2)糞便発酵中に,バナナの多糖類は約80%まで徐々に分解された。

3)短鎖脂肪酸である酢酸塩,プロピオン酸塩,および酪酸塩の濃度を増加させた。

4)酢酸塩の生成は,プロピオン酸塩および酪酸塩の生成よりも高かった。

5)細菌叢を構成する細菌の多様性が大幅に変化した。

6)糞便中のビフィズス菌(Bifidobacterium sp.)の割合を維持しながら,バクテロイデス(Bacteroides sp.)の相対的な存在量を増加させた。

7)有意差は見られないものの,ラクトバチルス(Lactobacillus acidophilus)の割合も増加させた。

 

これらより,粉末バナナはヒト腸内の特定の細菌によって活用され,腸内細菌叢を改善し,ビフィズス菌とバクテロイデスの成長を促進し,有益な短鎖脂肪酸(酢酸塩,プロピオン酸塩,酪酸塩)を生成することが確認された。

そして,生産用途および私たちの毎日の食事におけるプレバイオティクスとしての粉末バナナの機能性が示唆された。

 

バナナはフルーツとしてそのまま食べたり,ジュースにしたり,またバナナチップとして食したりなど,私たちの食生活でとても身近にあるフルーツ,大いに活用したいものである。

 

〔文献〕

Tian DD. et.al., Effects of banana powder (Musa acuminata Colla) on the composition of human fecal microbiota and metabolic output using in vitro fermentation. J Food Sci. 2020 Aug;85(8):2554-2564.

参考)

プレバイオティクス:

英国の微生物学者Gibsonによって1995年に提唱された用語。プロバイオティクスが微生物を指すのに対してプレバイオティクスは以下の条件を満たす食品成分を指す。,

a)消化管上部で分解・吸収されない。

b)大腸に共生する有益な細菌の選択的な栄養源となり,それらの増殖を促進する。

c)大腸の腸内細菌叢の構成を健康的なバランスに改善し維持する。

d)人の健康の増進維持に役立つ。

 

16SrRNA:

細胞内でタンパク質合成を担うリボソーム中に含まれる核酸(RNA)のこと。この核酸の塩基配列は菌種ごとに異なるため,その配列を調べることで菌の分類・同定を行うことができる。また,その配列は特定の菌種の検出・定量にも利用されている。


 

(4/5/2022 報告:村上志緒 学術委員)

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