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研究トピックス

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No.21 不安や抑うつの軽減だけでなく、日々のストレスを和らげるレモンバーム

レモンバーム(Melissa officinalis)は伝統的にマイルドな不安症や不眠に用いられてきた身近なハーブだ。

 

その抗不安作用と抗うつ作用をもたらす主要成分はフェノールとフラボノイドで、主にロスマリン酸だ。動物実験では、ロスマリン酸はGABAトランスアミナーゼを阻害することによってガンマアミノ酪酸(GABA)をアップレギュレートし、血清コルチコステロン値を低下させ、不安を軽減させる可能性があることがわかっている。また、ロスマリン酸の抗うつ作用はそれだけでなく、セロトニン作動性経路および海馬脳由来神経栄養レベルへの影響、および、抗炎症作用とフリーラジカル捕捉作用による神経保護など、さまざまな作用が複合的・総合的に働いている可能性がある。

 

最近行われたレモンバームの抑うつと不安における効果に関する系統的レビューとメタアナリシスで、レモンバームの安全性と、レモンバームは特に急性の症状で不安や抑うつを大幅に軽減することがわかった。

 

この系統的レビューでは、2020年10月30日までに発表されたレモンバームに関する全てのランダム化臨床試験から、抑うつまたは不安の症状のある患者または健康な人合計632人を対象にした合計10件の試験を対象にメタアナリシスを行ったものだ。これらの試験は、レモンバームは1日あたり300mgから5,000mgの投与量の範囲で、また、単回投与から56日までの投与期間で、さまざまな種類のレモンバーム製剤で行われていた。

 

まず、不安症改善においてレモンバームは5〜7日の短期間で効果をもたらすことがわかった。冠状動脈バイパス手術後の80名の患者に1日1.5 gのレモンバーム(葉のドライパウダー)を7日間分割投与したところ、プラセボに対して不安スコアが49%、不眠の質が54%改善した。また、別の試験でも、強い不安感を持つ45名にレモンバーム(濃縮エキス)またはラベンダーを5日間与えたところ、レモンバームとラベンダーともに不安感の改善に効果が認められた。なお、この試験ではラベンダーの方がレモンバームよりも不安症状を軽減する効果は高かった。

 

ただし、軽度から中程度のうつ症状の改善には10日から8週間のより長い期間が必要となるようだ。帝王切開後の女性のマタニティブルーズにおける試験では、レモンバーム(レモンバーム葉のドライパウダー500 mg配合のカプセルを1日2回)、抗うつ剤(フルオキセチン 10 mg、1日2回)、レモンバームと同様に準備されたラベンダー(Lavandula angustifolia)が使用され、それぞれのグループの抑うつ症状を経過を観察したところ、それら全てにおいて8週間の時間の経過の中で同等の抑うつ症状の改善が認められた。

 

また、健康な人において、レモンバームは単回投与(ロスマリン酸2%標準化のレモンバームエキス剤 300 g)でも不安感を軽減し認知や記憶パフォーマンスを向上することがわかった。この研究では、健康な人に、フルーツから作られた自然の甘味料とレモンバームエキス 300 mgと600 mgの組み合わせ、人工甘味料とレモンバームエキス 600 mgの組み合わせ、プラセボの4種類の製剤を用意し、それらをドリンクに入れて行った試験と、ヨーグルトに入れて行った試験が個別に行われ、摂取後1時間後と3時間後の不安スコアとさまざまな認知パフォーマンスのスコアを調査した。ドリンク剤では、マルチタスクのワークにおいて、自然甘味料のレモンバーム製剤で、レモンバーム 600 mgは1時間後の計算処理、1時間後と3時間後の精神運動機能、また、レモンバーム 300 mgと600 mgの両方でワーキングメモリーが明らかに向上し、ヨーグルト剤では特にレモンバーム 300 mgで、注意力と計算パフォーマンスが顕著に向上した。また、非常に興味深いのは、唾液中コルチゾール値がプラセボでは作業開始の1時間後に増加している中、いずれのレモンバーム製剤においてもコルチゾールの増加が認められず、3時間後にはレモンバーム 600 mg入りの自然甘味料製剤のみでコルチゾールの減少が認められた。また、押し並べて自然甘味料のレモンバーム製剤で認められた効果が、人工甘味料のレモンバーム製剤ではいくつかのテストを除きほとんどのテストで認められず、むしろプラセボよりも結果が悪化したものも多かった点だ。ハーブを何と一緒に摂取するかも重要なようだ。

 

不安や抑うつの改善のためだけでなく、普段から気持ちを穏やかに過ごすために、身近で入手しやすいレモンバームを、効果を抑制しないよう自然の食材と組み合わせながら日常的に活用していきたい。

 

〔文献〕

Ghazizadeh J, et al. The effects of lemon balm (Melissa officinalis L.) on depression and anxiety in clinical trials: A systematic review and meta‐analysis. Phytotherapy Research. 2021 Aug 27.

 

(12/10/2021 報告:河野加奈恵 学術委員)

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