研究トピックス
鮮やかな黄橙色で美しく咲くカレンデュラの花は,古くから傷ついた皮膚を癒してくれるハーブとして好まれてきた。カレンデュラの活用にはバームのように皮膚に塗布する外用と内服が考えられる。今回紹介する論文は,この2つの活用法での違いについて検討したものである。
この研究は、カレンデュラ花エキスによるラットの外傷の治癒への効果として,内服と外用の各々のアプローチによる状態変化を明らかにすることを目的としている。
方法は以下の通り。
外傷を受けた後,カレンデュラエキスで処理したグループと処理しない対照グループに分かれて,8日後の状態を比較した。処理したグループはカレンデュラエキスの内服,またはカレンデュラエキスの外用を施した。効果の度合いは以下の3つについて検討することとした。
1)外傷部位の上皮化に要する日数と外傷部位がどのくらい修復しているか組織を観察することによって検討した。
2)創傷治癒時に増殖する肉芽組織中のコラーゲンを構成するアミノ酸であるヒドロキシプロリンの変化を調べた。
3)粘液中に含まれ,傷の修復に関連しているとされるヘキソサミンの量について調べた。
これらにより、以下の結果を得た。
1)カレンデュラグループでは,内服でも外用でも,外傷部の90。0%が修復した。
2)対照グループでは修復率は51。1%にとどまった。
3)対照グループでは,外傷部位の上皮化に17日を要した。
4)カレンデュラを20mg/kg,または100 mg/kg用いたグループでは,外傷部位の上皮化に各々14日,13日に短縮された。
5)ヒドロキシプロリンはカレンデュラグループで顕著に増大した。
6)ヘキソサミンもカレンデュラグループで顕著に増大した。
これらの結果より,カレンデュラには内服でも外用でも,創傷治癒の効果があることが示唆された。
カレンデュラといえばお肌のケアのための万能薬,カレンデュラ軟膏・・。今回紹介した研究報告は,多くの人が実感している,このカレンデュラの創傷治癒効果が飲んでも塗っても得られることを検証した一報である。
〔文献〕 Preethi KC, Kuttan R. Wound healing activity of flower extract of Calendula officinalis. J Basic Clin Physiol Pharmacol. 2009; 20(1): 73-79.
参考:
上⽪化 epithelialization
外傷により⽋損した⽪膚や粘膜が,治癒過程において,上⽪(表⽪や粘膜上⽪)が形成され,再度被覆されること。 創傷の治癒過程では,⾁芽組織が形成され,表⽪細胞が遊離・増殖して再⽣上⽪が形成される。
ヒドロキシプロリン
創傷の治癒過程で肉芽組織ができるときに,組織の構造となるコラーゲン線維ができる。ヒドロキシプロリンは,コラーゲンやゼラチンに特徴的にみられるアミノ酸であり,コラーゲンの構造の安定性をつくる役割を持っている。ヒドロキシプロリンの量は,コラーゲンの量を反映しているものとして,コラーゲンの定量は,ヒドロキシプロリンアッセイによるヒドロキシプロリン量を基にして算出される。
ヘキソサミン
へキソサミンヘキソース(六炭糖)の⽔酸基をアミノ基に置換したアミノ糖の総称。創傷治癒の過程で,粘液中での濃度上昇が確認されていることから,創傷治癒に関連していると考えられ,治癒の状態を⽰す指標の⼀つとなっている。